太田市美術館・図書館 ART MUSEUM & LIBRARY, OTA
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プレオンラインプロジェクト「わたしのホームタウン」

2019年末に発生した新型コロナウイルスによるパンデミックは、私たちの生活に多大な影響を与え続けています。移動が制限され、「STAY HOME」が求められる状況は、私たちの住む場所・住んできた場所を改めて見つめ、思いを巡らせる機会となったとも言えるでしょう。
当館開館3周年記念展「HOME/TOWN」は、当初2020年7月23日~11月1日を会期に開催予定でしたが、感染症の影響により、2021年2月11日(木・祝)~5月30日(日)の会期に変更となりました。
これに伴い、これから展覧会初日までの期間に、プレオンラインプロジェクト「わたしのホームタウン」を実施いたします。
オンライン上でコンテンツを発信し、イベントを開催することで、多くの人が、それぞれの場所で故郷、ふるさとについて思いを巡らせていただき、作品や作家に関心を持っていただく機会となれば幸いです。

コンテンツ・イベント一覧

―展覧会に向けたメッセージ

本展ディレクターの小金沢智氏、当館学芸員 矢ヶ﨑結花、展覧会グラフィックおよび図録・広報物デザイナーの平野篤史氏、図録編集者の梅原志歩氏(左右社)による、本展開催に向けたメッセージを公開いたします。

 

この土地で生まれ、また育まれた文化芸術とともに、未来を考える場として開催した開館記念展「未来への狼火」から3年。太田市美術館・図書館では、2020年7月、開館3周年を記念して「ホームタウン」を主題とする展覧会「HOME/TOWN」を計画していました。
しかし、計画していた頃から社会状況は一転して、現在、わたしを含む多くの人びとは、COVID-19感染拡大防止の観点から、国境はおろか県境までも移動困難になっています。展覧会が延期になるばかりではなく、社会的には土地だけではなく人同士の分断も進み、ウィズコロナの時代とも呼ばれるようになりました。生活環境が大きく変わってしまったいま、けれどもこの時勢だからこそ、生まれ育ち、あるいは慣れ親しんだ土地を深く見つめることができるかもしれません。

私自身は、警察官を勤めていた父の都合上、幼少期から家族で群馬県内を転々としました。一番古い記憶は、(熱暑で全国的に知られる)館林市。幼稚園か小学校低学年だったか、雑木林や草むらで、カブトムシやバッタ探しに夢中になったことが思い出されます。以来、長野原町、大胡町と県内の東西に移り住み、今、父母が暮らす実家は市町村合併で勢多郡から前橋市に吸収。大学進学のため上京して20年弱、それぞれの場所は変化し、いまや私の頭の中にしかないのかもしれない場所の記憶の集積が、私のホームタウン=故郷のイメージを形作っています。
つまりホームタウンとは、誰もが同様に共有できるものというよりも、個人としての人がどのように生きてきたのかと不可分に結びついた、抽象的なイメージであるのかもしれません。けれども、であるからこそさまざまな分断が深刻化する現代、他者と互いを知り合うためのひとつの頼りとなるのではないでしょうか?

延期を経て2021年2月に開催予定の「HOME/TOWN」は、太田市美術館・図書館が主催・開催する展覧会です。COVID-19の影響がまだ大きくない、2020年はじめに書いた趣旨文にあるように、本展はあくまで太田という場所とその風土を出発点に企画されたものに違いありません(したがって、あえてテキストの修正はしませんでした)。
ーーしかし、いま、さまざまな場所で生きている人たちと、その数だけあるはずのホームタウンを、本展を通してともに考える機会にできるのではないか。2020年9月より、プレオンラインプロジェクト「わたしのホームタウン」として、これまで展覧会に関わってくださったアーティスト8名にエッセイをお願いし、さらにSNSを通した参加型オンラインイベント「#わたしのホームタウン 」などを行うことに決めたのは、主催者のそのような思いにほかなりません。たとえ、直接知らず、これからも訪れることや、会うことはなくても、ある土地とその場所の風土、そこで生きている人たちのことを、想像するために。本展は、展覧会とオンラインの二本を柱に開催されます。

小金沢智(本展ディレクター/東北芸術工科大学専任講師)

 

hometownとふるさとに違いはあるのだろうか?そう思い、辞書を引いてみました。そこには、語義の後に「日英比較」として、「日本語の「ふるさと」は生まれた土地を指すが、hometownは生まれた土地、育った土地、住み慣れた土地、現在住んでいる所のいずれをも意味する」と丁寧に書き添えられていました。つまり、hometownは“家のある場所/あった場所”と捉えるのが良いのかもしれません。私は、この4月から太田で暮らし始めましたので、「家がある」という意味では、太田市も私のhometownです。しかし、未だにまちを歩くと、観光をしているような目線で景色を眺めている感覚があります。
本展では、3人の作家が捉えたそれぞれのhometownが立ち現れることでしょう。彼らがhometownへ向ける視線においてこの土地を見つめたら、どういうイメージが現れるのか、ぜひ会場でご覧いただきたいと思っています。そのためにも、この感染症に向き合いつつ、展覧会の無事の開幕を願って、準備を進めてまいりたいと思います。
(文中の引用は竹林滋ほか編『研究社新英和大辞典第6版』研究社、2002年、p.1176より)

矢ヶ﨑結花(本展担当学芸員/太田市美術館・図書館)

 

本展覧会のディレクションを手がける小金沢さんからグラフィックの依頼を受けた際、展覧会名をお聞きし、HOME / TOWNの「/」は川を意味しています。という事がデザインの始まりです。記号としての「/」は、単語と単語を隔たり繋げたり、実のところ意味を定義するのは難しく、andなのかorなのか不明瞭な存在です。今回、その「/」が川なのです。と言われた際、ああなるほど、川というのは我々人間にとっても、生活を隔たり繋げたりしている存在だな。と気づかされました。なので「/」を隔てるでも、繋げるでもない、中間的な意味合いの「川」として見せたいと考えました。緩やかに流れているイメージで、造形としてもゆるさを持った手書きの線。そして、川が出来れば風景が生まれます。太田に存在するモチーフをアルファベットに置き換えていきました。片山さんの作品にも出てくる橋であったり、古墳、金山、家々、電線、、、それぞれの文字に図像としての役割を入れ込み、この太田で開催する意味、 太田でしか出来ないデザインという事を目指しました。
デザイン案を試行錯誤している時期は、奇しくも世の中は自粛モードの大変な中。色々な思いが駆け巡りましたが、墨による図像的表現の文字を書き、手触りのある根源的な質感が生み出せればと思いました。
ちなみに「/」というのは、大きな意味で太田市美術館・図書館でもあると思えてきます。

平野篤史(本展グラフィックデザイナー/AFFORDANCE)

 

「HOME/TOWN」展の図録編集のお話をいただいたのは、2020年3月。ちょうどcovid-19の感染拡大で全国の美術館が休館を余儀なくされた時期でした。
そのあと展覧会の開催が延期になり、いつまでこの状況が続くのかもわからず、目的なく彷徨っているような日々でした。
そんな状況下で、なにか足場になるものを求めたとき、自分にとって頼りになるのは、どこかの美術館で見た絵、いつも聴いている音楽、繰り返し読む本のなかの言葉、そして心許せる人たちでした。それは小さな街のようにも見えました。
狭義のhometownは「生まれ育った場所」や「故郷」を表しますが、実際のhometownはそれだけにとどまらない、もっとぼんやりしたものだと思っています。なぜか自分のなかから消してしまえない何ものか。それは現実の場なのか架空の場なのか、さらには場所ではない何かなのか。この展覧会を通じて考えを巡らせています。

梅原志歩(本展図録編集者/左右社)

 

―出品作家のスペシャルコンテンツ 「吉江淳の写真ノート」 

9月15日(火)~2021年2月10日(水)
こちらから

太田市出身、在住の吉江淳氏が、太田市周辺で日々撮影している写真を、展覧会オープン前日まで連載します。吉江氏の写真をご覧いただくことで、みなさまにとっての「ホームタウン」をお考えいただくきっかけになれば幸いです。当館休館日を除いて、毎日更新します。

―特別寄稿:「わたしのホームタウン」

当館が今年3周年を迎えたことを記念して、過去、太田市美術館・図書館の展覧会に参加してくださった作家の方々に、「わたしのホームタウン」をテーマにご寄稿いただきます。10月1日(木)から月に2度のペースにて公開予定です。ぜひご覧ください。

〇公開予定日:2020/10/1~ 以下の通り全8回を予定
(2020年10月1日/10月15日/11月1日/11月15日/12月1日/12月15日/2021年1月15日/2月1日)

▽寄稿者:
・KIKI (1978年東京都生まれ、モデル・写真家)
 (2016年度太田フォトスケッチvol.1「まちかどの猫~写真家KIKIさんをむかえて~」
  2017年度 太田フォトスケッチvol.2「て・あし・まち」)
・淺井裕介(1981年東京都生まれ、美術家)
 (2017年度開館記念展「未来への狼火」)
・須永有(1989年群馬県太田市生まれ、画家)
 (2017年度本と美術の展覧会vol.1「絵と言葉のまじわりが物語のはじまり~絵本原画からそうぞうの
  森へ~」)
・内田あぐり(1949年東京都生まれ、日本画家)
 (2018年度開館1周年記念 佐久市立近代美術館コレクション+ 「現代日本画へようこそ」)
・平間至(1963年宮城県生まれ、写真家)
 (2018年度太田フォトスケッチvol.3「祝」)
・最果タヒ(詩人)
 (2018年度本と美術の展覧会vol.2「ことばをながめる、ことばとあるく——詩と歌のある風景」)
・佐藤直樹(1961年東京都生まれ、画家、デザイナー)
 (2019年度本と美術の展覧会vol.3「佐藤直樹展:紙面・壁画・循環」)
・蓮沼執太(1983年東京都生まれ、音楽家)
 (2019年太田の美術vol.3「2020年のさざえ堂——現代の螺旋と100枚の絵」)

 

 

 

 

―参加型オンラインイベント:「#わたしのホームタウン」

みなさまにとって「ホームタウン」とはどのような存在でしょうか。今回のプロジェクトは、みなさまがお住まいのそれぞれの場所で、「ホームタウン」について思いを巡らせ、考えていただくために実施しています。自分の街や故郷、家等について、SNS(ツイッター、フェイスブック、インスタグラム)にて「#わたしのホームタウン」を付けて、呟いたり、写真を投稿してください。みなさまのご参加をお待ちしております。
ご投稿いただいた内容は、当館公式アカウントから、リツイート、リポストさせていただく可能性がございます。
また、ご投稿内容を展覧会関係広報物に掲載させていただくこともございますが、その際はあらかじめSNSを通じてご連絡差し上げます。

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