太田市美術館・図書館 ART MUSEUM & LIBRARY, OTA
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【アーカイブ】ものづくりシリーズ「愛でるボタン展 ~アイリスのボタンづくり~」

2018年11月10日(土)〜2019年1月14日(月・祝)

ボタンづくりで日本一のシェアを誇る「株式会社アイリス」
と協働し、太田に受け継がれてきた「ものづくり」の遺伝子
を探求した企画展

 

超絶技巧ミクロモザイク 18世紀イタリア 18金土台に色ガラス

太田市美術館・図書館では、太田市内のものづくり関連企業と協働し、「ものづくり」のなかにある「創造性」の発掘を試みる展覧会『ものづくりシリーズ「愛でるボタン展 〜アイリスのボタンづくり〜」』を開催しました。アイリスが運営する「ボタンの博物館」の所有する世界的に見ても貴重なボタンのコレクションの特別展示や、群馬県在住の芥川賞作家・絲山秋子と、地元太田市在住の写真家・吉江淳が市内のボタン工場を訪ね、テキストと写真でボタンづくりの魅力を表現しました。


株式会社アイリスとボタンの博物館

ボタンメーカーである株式会社アイリスは、前身である太田樹脂工業所(1946年)の創業以来、太田市内に工場をおいている代表的な地元のものづくり企業です。
創業者である大隅金六の「これからは和服ではなく洋服の時代」との着眼からボタン製造を始めたアイリスは、同じく太田に生産拠点を持っていた中島飛行機の技術者を容易に登用できたことなどの要因が重なり、今では日本一のシェアを誇るボタンメーカーとなりました。
そのアイリスが、東京都日本橋で運営する企業博物館が「ボタンの博物館」です。創業者の次男である大隅浩が半世紀をかけて蒐集したアンティークボタンやその関連書籍を収蔵する、世界でも希少な博物館であり、本展では、同館が収蔵する歴史的、文化的価値の高いボタンを多数展示しました。


展覧会 Exhibition

 展示室1

<アイリスコレクション>

アイリス社が運営する「ボタンの博物館」の協力により、同館が収蔵する歴史的、文化的価値の高いボタン約800個を展示しました。ボタンのセレクション、解説などはボタンの博物館・学芸員の金子泰三氏、展示構成は本館設計者である平田晃久氏が担当。見た目にも美しいコレクションを通して、工芸品としてのボタンの価値を再発見しました。

 

 

 

創造の道(スロープ)~ 展示室2

<エッセイ&フォト「ボタン工場をめぐる」>

群馬県在住の芥川賞作家・絲山秋子氏と、地元太田市在住の写真家・吉江淳氏が太田市内のボタン工場を訪ね、ボタンづくりの魅力をそれぞれテキストと写真の形式で表現しました。

 

 

文/絲山秋子 写真/吉江淳

〈新田工場〉

金型はロマン。色の違う樹脂を何層にも重ね、練って練ってぎゅうっと押し出す。
終わらない福引き。大きなガラを一晩回して竹のチップで磨きをかける。小さな穴はクルミの粉で貫通させ、樹脂のバリは石の粒で取り除いてある。最後はきれいに洗って綿で拭くのだ。
こんなに大事にされて、この世に生まれた。
ざらざら溢れ、きらりと回る。小さくかたむき、転げてひかる。

 

〈尾島工場〉

クッキーや金太郎飴みたいな丸い樹脂の素材はダブル・バンガードというロボットで削り整えられ、表も裏もまっとうな正真正銘のボタンになるのです。
尾島工場にはダブル・バンガードがずらりと並んで、静かに首を振っている部屋があります。穏やかなリズムのロボットたちの、控えめな愛に包まれている気分になります。いつか夢見た未来のようです。

 

〈矢島工場〉

メタルボタンには一枚物とかぶせボタンがある。一枚物はメダルや硬貨みたいにソリッドなボタン、かぶせボタンは和菓子のモナカみたいに表と裏をかしめて作る。学生服やブレザーのボタンには所属を表す校章やマークがひとつひとつ刻印される。金属のボタンは強くて、ユニフォームとの相性がいい。
私見だが腕の短い男性は年齢を重ねてもブレザーが似合う。スーツの上着よりも着丈が短いからだろう。

 

 


プロフィール Profile

参加作家



絲山 秋子(いとやまあきこ・小説家)

1966(昭和41)年 東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、住宅設備機器メーカーに入社、2001年まで営業職として、福岡、名古屋、高崎、大宮に赴任。2003年「イッツ・オンリー・トーク」で文學界新人賞を受賞、2004年「袋小路の男」で川端賞、2005年「海の仙人」で芸術選奨文部科学大臣新人賞、2006年「沖で待つ」で芥川賞、2016年「薄情」で谷崎賞受賞。他の作品に『逃亡くそたわけ』、『ばかもの』、『不愉快な本の続編』、『離陸』『絲山秋子の街道を行ぐ』『小松とうさちゃん』などがある。2005年より高崎市在住。



吉江 淳(よしえあつし・写真家)

1973年 群馬県太田市生まれ。1997年 中央大学文学部卒業後、建築写真のスタジオに入社。1999年から北海道士幌の牧場でおよそ一年間働いた後、2000年、都内に戻りフリーランスとして活動開始。2002年に太田に帰郷し広告婚礼等の撮影を行う一方、地方都市をテーマとした作品を制作している。近年の個展に、2015年 「地方都市」ギャラリー722(岡山)、2015年 「村社」ギャラリー蒼穹舎(東京)、2017年 「川世界」梅田 蔦屋書店(大阪)など。主な写真集に2014年 「地方都市」(蒼穹舎)、2016年 「川世界」(salvage press)、2018年 「出口の町」vol.1 (salvage press)がある。

ゲストキュレーター



金子 泰三(かねこたいぞう・ボタンの博物館学芸員)

1954(昭和29)年、ボタンや手芸材料を扱う埼玉県旧浦和市の小売店生まれ。獨協大学法学部卒業後、「ボタンの博物館」の運営母体であるボタンメーカーアイリスに入社し、アパレル直販部門に配属。6年後に家業にもどり、ボタン手芸洋装材料の小売店を兄弟で経営。1995年にアイリスに再入社し、1999年から博物館管理担当。2002年にボタンの博物館の図録編集に携わったことをきっかけに学芸員資格取得。以後、各地のボタンやホビーイベント、百貨店催事のボタンに関するトークショーで、アンティークボタンの歴史や魅力を紹介。

会場構成


©Luna Gabino
平田 晃久(ひらたあきひさ・建築家)

1971年大阪府に生まれる。1994年京都大学工学部建築学科卒業。
1997年京都大学大学院工学研究科修了。伊東豊雄建築設計事務所勤務の後、2005年平田晃久建築設計事務所を設立。2015年より京都大学赴任、現在 京都大学教授。
主な作品に「桝屋本店」(2006)、「sarugaku」(2008)、「Alp」(2010)、「coil」「Bloomberg Pavilion」(2011)、「kotoriku」(2014)、「9h Projects」(2018‐)等。ベネチアビエンナーレ建築展金獅子賞(2012、伊東豊雄・畠山直哉・他2名との共働受賞)、村野藤吾賞、BCS賞(いずれも太田市美術館・図書館)等受賞多数。「A Japanese Constellation」展(2015、ニューヨーク近代美術館)、「人間自然」展(2019、忠泰美術館、台湾・台北)参加。最新著書に『Discovering New』(TOTO出版)等。

<グラフィック



平野 篤史(ひらのあつし・グラフィックデザイナー)

1978年、神奈川生まれ。2003年、多摩美術大学美術学部グラフィックデザイン学科卒業。株式会社MAQ、株式会社ドラフトを経て、デザインスタジオAFFORDANCE設立。主な仕事として、企業ブランディング、CI、VI、プロダクトデザイン、エディトリアルデザイン、ロゴデザインなど、グラフィックデザインを基軸に活動。太田市美術館・図書館開館(設計:平田晃久、2017年)にあたって、ロゴマーク及びサイン計画を担当した。多摩美術大学准教授。TDC賞,JAGDA新人賞,SDA賞,経済産業大臣賞などを受賞。

 


関連イベント Related Events

アーティストトーク

絲山氏、吉江氏によるトークショー。太田のこと、ものづくりのこと、群馬の景色などについて語っていただきました。

日時:2018年11月10日(土) 午後2時から3時

会場:視聴覚ホール

出演:絲山秋子、吉江淳

参加費:無料


※アーティストトーク

キュレータートーク

ゲストキュレーターの金子泰三氏に、ボタンの博物館の収蔵品をもとに、ボタンづくりの歴史、工芸品としてのボタンの魅力などについて解説していただきました。

日時:2018年11月23日(金・祝)午後2時から3時

会場:視聴覚ホール

出演:金子泰三(ボタンの博物館 学芸員)

参加費:無料


※キュレータートーク

ワークショップ

アイリス社の協力により、ボタンを使って手作りを楽しむワークショップを開催しました。

①くるみボタンを作って楽しむ

日時:2018年11月18日(日)午後1時〜5時

会場:イベントスペース

参加費:300円

②クリスマスボードを作る

日時:2018年12月8日(土)午後1時〜、2時〜、3時〜、 4時〜

会場:イベントスペース

参加費:300円

工場見学

太田市内にあるアイリスの矢島工場見学会を実施

日時:2018年12月26日(水)午前10時〜正午

会場:株式会社アイリス 矢島工場

参加費:無料


※工場見学


概要 Overview

会 期:2018年11月10日(土)〜2019年1月14日(月・祝) 52日間

会 場:太田市美術館・図書館 展示室1および2、創造の道(スロープ)

主 催:太田市、一般財団法人太田市文化スポーツ振興財団

協 力:株式会社アイリス、株式会社エーアイラボオオタ、東武鉄道株式会社

助 成:公益財団法人朝日新聞文化財団、公益財団法人アサヒグループ芸術文化財団

後 援:太田市教育委員会、太田商工会議所、群馬テレビ、株式会社エフエム群馬、エフエム太郎、上毛新聞社、朝日新聞社前橋総局、産経新聞前橋支局、東京新聞前橋支局、毎日新聞前橋支局、読売新聞前橋支局、光ネット株式会社

観覧料:無料

参加作家:絲山秋子、吉江淳
ゲストキュレーター:金子泰三
会場構成:平田晃久
グラフィック:平野篤史
総合ディレクション:スパイラル/株式会社ワコールアートセンター

記録写真:吉江 淳(※以外の写真)

フォトブック

展示室2と創造の道(スロープ)で展示している、芥川賞作家・絲山秋子氏が書き下ろした掌編テキストと、写真家・吉江淳氏が撮り下ろした作品を収録したフォトブックを販売しました。デザインは当館のサイン計画も担当したグラフィックデザイナー・平野篤史氏となります。

発 行:太田市美術館・図書館
協 力:株式会社アイリス
編 集:守屋慎一郎(スパイラル)
デザイン:平野篤史(AFFORDANCE)
印 刷:北川大輔(Kraan inc.)

 

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