【アーカイブ】平田晃久建築展太田市美術館・図書館の建築プロセスを中心に

「生成する建築」平田晃久設計プロセスに迫る
太田市美術館・図書館の建築が実現するまでの全記録を、平田建築の資料とともに紹介した建築展。平田氏の造語である〈からまりしろ〉とそれに関わるプロジェクトを模型や図面で示すとともに、太田市民を巻き込みながら進行した建築プロセスを公開しました。
プロフィール Profile
![]() ©Luna Gabino
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平田晃久(ひらた・あきひさ) 建築家、京都大学教授1971年大阪府に生まれる。1994年京都大学工学部建築学科卒業。1997年京都大学大学院工学研究科修了。伊東豊雄建築設計事務所勤務の後、2005年平田晃久建築設計事務所を設立。2015年より京都大学赴任、現在 京都大学教授。 主な作品に「桝屋本店」(2006)、「sarugaku」(2008)、「Alp」(2010)、「coil」「Bloomberg Pavilion」(2011)、「kotoriku」(2014)、「9h Projects」(2018‐)等。 ベネチアビエンナーレ建築展金獅子賞(2012、伊東豊雄・畠山直哉・他2名との共働受賞)、村野藤吾賞、BCS賞(いずれも太田市美術館・図書館)等受賞多数。「A Japanese Constellation」展(2015、ニューヨーク近代美術館)、「人間自然」展(2019、忠泰美術館、台湾・台北)参加。最新著書に『Discovering New』(TOTO出版)等。 |
展覧会 Exhibition
展示室1
Prologue 生きている建築
展示室1では、〈からまりしろ〉に関する7つのキーワードを基に、関連するプロジェクトの模型や図面を展示しました。これらのキーワードがどのように太田市美術館・図書館の構想に組み込まれているのか、展示を通して感じることができました。
〈からまりしろ〉とは、平田氏が生きている建築をつくるために提唱する考え方であり、(「からまる」+「しろ=余地」)を合わせた造語です。人間の営みも建築も自然の一部である中で、樹の枝に鳥の巣が宿り、海藻に魚卵が産み付けられるように、人間も街も建物にからまって生きているということを表します。
たとえば上空から屋根を眺めてみると、自然の地形にとても似ていることが分かる。屋根は雨水を流すためにつくる形であり、自然の地形は水が流れることによってできる形だからだ。人間は屋根を人工物だと思っているが、別の視点で考えてみると、屋根も自然地形も水がつくった形なのである。建築は自然の一部なのだ。
農業や都市化のような人間の営みを上空から眺めてみると、人間は地表面を発酵させる微生物のようなものに見えてくる。建築とは地表面を発酵させて、より沢山の表面をつくりだし、拡張させるはたらきを担っているかのようである。そんな生命的営みとして建築をとらえなおしてみること。
道は生き物のようだ。道が血管だとしたら、歩く人は血液のように街に酸素や養分を送り届ける。道は時に分岐し、太さを変え、そのまわりに様々な建物や出来事を育みながら成長し、変化し続ける。もし、道と建物が一体化して、全体として一つの建築になったら。生き物のような人の流れや出来事を飲み込んだ場が生まれるのだろうか。
海中のサンゴや煙のような「ひだ」は、限られた体積の中に表面積を最大化しようとしたときにできる形である。建築もまた「ひだ」として解釈できるのではないか。なぜなら建築もまた、限られた敷地の中に、人のための表面積を最大化しようとするものであるからだ。数学的に構想されたひだの建築化。
樹齢数百年という巨樹の存在に心をひかれる。それはたいてい若い樹木のように純粋な樹形をしていない。雷が落ちたあとがあったり、部分的に腐っていたり、表面に違う植物が生えていたり。過ごしてきた様々な履歴が刻まれたいびつな姿をしている。巨樹のような魅力を持った建築を設計することは可能だろうか。
自然環境の中にあるような、高低差がある立体的な関係性の中に身をおくと、どこか、自分たちの動物的本能が呼び覚まされるような気がしてくる。バリアフリーで省エネルギーの建築であっても、進化の中で身体に刻まれた動物としての感覚を失わないようなものをつくりたい。野性的な未来の都市のために。
人間の頭の後ろには目がついていないが、自分を取り囲む様々な出来事を、あたかも後ろに目がついているように感じている。360°の視界の中で、ばらばらな出来事がそれぞれの場所で起こっていて、しかもそれらが同時に感じられるような空間。そんな現代的な空間をつくりたい。地球上のあらゆる場所が同時につながれているこの時代に。
創造の道(スロープ)
Proposal 街を咲かせる/ Workshop 思考を育む
創造の道では、企画案が生まれた経緯を「Proposal」、市民を巻き込んで共同で進行した設計プロセスを「Workshop」とし、2つのテーマに沿って展示しました。
<Proposal 街を咲かせる>
- スタディ Study
- イメージスケッチ Image of Ota Flower
<Workshop 思考を育む>
- ワークショップフロー Process of workshop
- ディティールデザイン Detail design
展示室2
Construction 新しい太田へ
展示室2では、「みんなで北口をつくる」をテーマに、たくさんの人々が関わりながらつくられた太田市美術館・図書館の建築プロセスを「関係者のインタビュー動画」、「施工サンプルや図面などの資料」、「当時の様子が分かる記録写真」などで振り返りました。
- 美術館・図書館ができるまでを記録したソファー Sofa that records until building museum&library, Ota
- 施工サンプル Samples during the construction
- 展示風景
概要 Overview
会 期:2017年2月7日(火)〜3月5日(日)24日間
会 場:太田市美術館・図書館 展示室1、2、創造の道(スロープ)
主 催:太田市
協 力:㈱平田晃久建築設計事務所
観覧料:無料
関連イベント Related Events
平田晃久トークショー
日 時:2017年2月11日(土) 午後2時〜3時
会 場:視聴覚ホール
参加費:無料
館内見学ツアー
平田晃久建築設計事務所スタッフが案内する館内見学ツアーを行いました。
日 時:2017年2月19日(日)、2017年2月26日(日)各日午前11時〜、午後1時〜、午後3時〜
会 場:1階から屋上
参加費:無料